
GIGI MASIN / KITE

美しく繊細に響きわたるピアノ、情景を描き出す煌めくシンセサイザーの音色。メランコリックでありながら聴く者を柔らかく包み込み、心揺さぶるエモーショナルなサウンドが詰まったジジ・マシンの新作『Kite』。日本のポスト・クラシカルシーンで絶大な人気を誇る音楽家、haruka nakamuraによるリミックスと、12分を超える大曲“Venice In Winter”の2曲を、ボーナストラックとして追加収録した、日本独自企画盤CD。
また、アルバムの中でも特に人気がある楽曲“Kite”と、音楽家haruka nakamuraによるリミックスを収録した、ジジ・マシン名義としては初の7インチ・レコードもリリース決定。
CD : 9/19 Release
CD Tracklist :
1. Kite
2. Aphrodite's Eyes
3. Closer
4. Blue Line
5. Irish Dove
6. Morning Light
7. Magic Touch
8. Venice In Winter<Bonus Track>
9. Irish Dove(haruka nakamura Remix)feat. Yudai<Bonus Track>
7inch : 11/3 Release
7inch Tracklist :
Side A: Kite
Side B: Irish Dove(haruka nakamura Remix)feat. Yudai<Bonus Track>
友人のみなさんへ
最近、「変化」という意味についてずっと考えています。曲がり角を曲がるのか、道を直進し続けるのか、波風に航路を合わせる船、雲から少し離れて空を舞う凧、いろいろな変化があります。新しい道、さらなる目的地、新たに向かう場所について考えていますが、これまでに出会った独特な人たち、笑顔、抱擁、仕事など、たくさんの思い出の詰まったカバンが自分にはあるのです。おそらく、変化とは、風の中に意味を見いだす凧を追いかけて橋を渡るようなことなのかもしれません。地平線を探して、もうひとつの夢を掴む理由を見いだす凧のように。
ここに収録されているのは、ここ数年で制作してきた楽曲の一部です。新しい色彩や音楽を待ちながら、夢や愛について語るために書いた曲です。バラなどの花が咲いた庭園を振り返りながら、隣の芝生も同じく美しく輝いていると願っている、そんな作品です。
from Gigi Masin(ジジ・マシン)
Gigiさんへ寄せて
Gigiさんの音楽との出会いは、nujabesさんが彼の楽曲「clouds」をサンプリングし制作した楽曲「latitude」でした。深夜のFMラジオから流れてきたそのトラックに打ちのめされて、渋谷にCDを買いに走ったものです。
それは「metaphorical music」という、本当に素晴らしいアルバムでした。
それから何年も時が経ち、Gigiさんの来日公演で前座を務めさせて頂く機会に恵まれました。
僕は彼の音楽をリスペクトし、彼の世界観を意識した上で、信頼するミュージシャンを集め、完全即興のアンビエントセッションを行いました。その時のセッションは、難しいトライとなりましたが、なんとかcloudsをオマージュしたリフレインを元に演奏しました。Gigiさんは舞台袖でとても褒めてくれました。そして、その後に演奏した彼のシンセサイザーの豊かな音色に、改めて感銘を受けました。
nujabesさんがなぜ彼の音をサンプリングしたのか、理解しました。nujabesさんと歩んできた道がまた一つ、帰結した瞬間でもありました。今回、リミックスのオファーを頂いたことにより、またGigiさんの音楽と向き合う時間が生まれました。
これが3度目のタイミングとなるわけです。
今回のリミックスでは、事前にアルバムの全曲を聴かせて頂いた上で、曲の選択は自由に選んで良いとのことでした。僕が選択した楽曲の素材として彼が送ってきてくれた音は、4小節ほどの短い音色がいくつか。というとてもシンプルなものでしたが、逆にこの素材だけで彼の音楽が成り立っているのだということに感心も受けました。
このシンプルな素材を元に、さてどうするか。
例えばピアノなどで、メロディアスな旋律をGigiさんのアンビエントな音色と混ぜ合わせて作ることも十分な可能性として目の前に広がっていましたが、やはり僕にとってGigiさんは「nujabesさんがサンプリングしたアーティスト」であり、やはりリズムを載せたくなりました。そして今回はGigiさんのアルバムのボーナストラックになるような楽曲を同時に目指しました。音数をなるべくそぎ落とし、僕のバンドメンバーの雄大に叙情的なトランペットを吹いてもらいました。彼の、間を意識したアプローチは、とても好みのサウンドでした。曲のコンセプトをよく解釈してくれたプレイに感謝します。一見シンプルな曲に聞こえますが聴き込むたびに、味が深まっていくようなトラックになっているかもしれません。
このトラックは2018年の、暑い夏の夜に制作しました。
東京の、都会の夜の気だるいビートと、Gigiさんの霧のようなアンビエントが溶け込んだ時間を楽しんで頂けると幸いです。
from haruka nakamura